第103回薬剤師国家試験 理論問題 問109_類似した生薬を表で比較しよう

こんにちは!ぴぃです。今回は問109 生薬の問題について解説します。


この問題では、似た名称の生薬の共通点や相違点を問われています。
早速それぞれの違いを見ていきましょう。

目次

問題

問 109 生薬の基原と用途に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 キョウニン及びトウニンは、いずれもバラ科植物の種子を基原とし、駆瘀血薬

として用いる。

2 トウキ及びセンキュウは、いずれもセリ科植物の葉を基原とし、それぞれ補血

薬及び駆瘀血薬として用いる。

3 ショウキョウ及びカンキョウは、いずれもショウガ科植物ショウガの根茎を基

原とするが、加工法が異なっており、薬効にも違いが認められる。

4 ニンジン及びコウジンは、いずれもセリ科植物オタネニンジンの根を基原と

し、補気薬として用いる。

5 ソウジュツ及びビャクジュツは、いずれもキク科植物の根茎を基原とし、利水

薬として用いる

第103回薬剤師国家試験問題及び解答(平成30年2月24日、2月25日実施) |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

解答・解説

選択肢1:キョウニンとトウニン

問1は同じバラ科のキョウニンとトウニンの共通点、相違点について問われています。
それぞれの特徴を見ていきましょう。

キョウニンとトウニンの比較

スクロールできます
キョウニン(杏仁)トウニン(桃仁)
科名バラ科バラ科
基原植物ホンアンズ・アンズモモ・ノモモ
薬用部位種子種子
主要成分青酸配糖体:アミグダリン、脂肪油青酸配糖体:アミグダリン、脂肪油
主治鎮咳去痰作用(キョウニン水として用いられる)、
緩下作用など
駆瘀血作用、消炎、緩下作用など
配合処方麻黄湯、麻杏甘石湯、大青竜湯など桂枝茯苓丸、桃核承気湯など

キョウニンは漢字で杏仁トウニンは漢字で桃仁なので、漢字で覚えると基原植物はすぐに覚えられますね!
科名、薬用部位は同じで、主要成分もおおまかに分類すると同じになります。
アミグダリン以外の成分で異なる部分があるため、作用に違いが出るのですね。

そして、トウニンは駆瘀血薬として用いられますが、キョウニンは駆瘀血薬としては用いられません。
主に鎮咳去痰薬として用いられます。

よって、選択肢1は×だと分かります。

ここから+α

キョウニンとトウニンの共通点は「穏やかな緩下作用」です。
表にもある通り、青酸配糖体以外にも油分が含まれています。
この油分によって潤腸通便が期待できます。

キョウニン、トウニンともに含まれている漢方薬に「潤腸湯」があります。
この潤腸湯はこの名称の通り、腸を潤して排便しやすくする漢方薬です。
類似した薬効の薬剤には酸化マグネシウムやルビプロストン(アミティーザ®)がありますが、酸化マグネシウムは腎機能低下患者に注意が必要であったり、ルビプロストン(アミティーザ®)は吐き気の副作用があったりなどと使いにくい場面があります。
このような場合に潤腸湯が良い選択肢となり得えます。
下記のように、透析患者の不安感(気鬱スコア)や便形状が改善したという報告もあります。

その結果,CSS は服用前後で中央値14から4点へと有意に低下した。ブリストル分類も平均1.4から4.3点へと有意に改善,便形状改善を示した。精神面では,気鬱スコアが中央値38から6点へと有意に改善した。以上,潤腸湯は透析患者の難治性便秘症に対して心身両面で有用な薬剤と考えられた。

<b>維持透析患者における便秘ならびに気鬱に対する潤腸湯の改善効果</b> (jst.go.jp)

まとめ

キョウニン=杏仁=アンズ、トウニン=桃仁=モモ
どちらも薬用部位は種子、主要成分は青酸配糖体(アミグダリン)
キョウニンはキョウニン水としても用いられ、鎮咳去痰薬として、トウニンは駆瘀血薬として用いられる

選択肢2:トウキとセンキュウ

選択肢2では同じセリ科のトウキとセンキュウについて問われています。
表で共通点、相違点を確認しましょう。

トウキとセンキュウの比較

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トウキセンキュウ
科名セリ科セリ科
基原植物トウキ、ホッカイトウキセンキュウ
薬用部位根茎
主要成分フタリド類(リグスチリドなど)の精油成分、クマリン、多糖類フタリド類(リグスチリドやクニジリドなど)の精油成分
主治補血、月経を整えるなど駆瘀血作用、鎮痛など
配合処方加味逍遙散、当帰芍薬散、補中益気湯など加味逍遙散、当帰芍薬散、温経湯、加味帰脾湯など

トウキ、センキュウはどちらもセリ科で主要成分はフタリド類ですが、薬用部位が異なります。
トウキは根、センキュウは根茎です。
根茎は地下にある茎で、節がありそこから根や葉を出しています。
下の図はイメージですが、根茎から根が出ている様子を表しています。

学生時代の覚え方は、トウキは3文字、センキュウは5文字…「ね」は1文字、「こんけい」は4文字…
文字数が少ない組(トウキ、ね)多い組(センキュウ、こんけい)で覚えていました。

問題文に戻りますが、トウキ、センキュウはセリ科という部分は同じですが、トウキは根、センキュウは根茎を基原とし、作用もトウキは補血作用、センキュウは駆瘀血作用を持ちます。

よって選択肢は×となります。

ここから+α

婦人科系の漢方薬として代表的なものに当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸があります。
これらはおおまかに証によって使い分けられます。

当帰芍薬散:虚証(体格はやせ型、体力が無い)
添付文書より「筋肉が一体に軟弱で疲労しやすく、腰脚の冷えやすいもの」

加味逍遙散:中間
添付文書より「体質虚弱な婦人で肩がこり、疲れやすく、精神不安などの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるもの」

桂枝茯苓丸:実証(体力や体質が中等度以上)
添付文書より「体格はしっかりしていて赤ら顔が多く、腹部は大体充実、下腹部に抵抗のあるもの」

まとめ

トウキ、センキュウはどちらもセリ科で主要成分はフタリド類
基原植物は生薬の名称と同じ
薬用部位はトウキ=根(ね)、センキュウ=根茎(こんけい)
文字数が少ない同士、多い同士で覚えよう!

選択肢3:ショウキョウとカンキョウ

選択肢3ではショウキョウとカンキョウの修治(加工法)の違いについて問われています。
ここでも表を用いて比較してみましょう。

ショウキョウとカンキョウの比較

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ショウキョウカンキョウ
科名ショウガ科ショウガ科
基原植物ショウガショウガ
薬用部位根茎根茎(湯通し又は蒸したもの
主要成分精油成分
辛味成分:6-ギンゲロールの割合が高い
精油成分
辛味成分:6-ショウガオールの割合が高い
主治健胃、制吐、去痰など健胃、清肺、制吐、去痰など
配合処方葛根湯、加味逍遙散、温経湯など小青竜湯、大建中湯、人参湯、半夏瀉心湯など

ショウキョウ、カンキョウは同じショウガ科ショウガの根茎から得られますが、加工の仕方(修治)に違いがあります。
カンキョウは、ショウガの根茎を湯通し、または蒸して得られます。
加熱処理をされることで、6-ギンゲロールが6-ショウガオールとなり、カンキョウの方が6-ショウガオールの割合が高くなります。
体を温める作用はカンキョウの方が大きいといわれています。

よってこの選択肢は〇です。

まとめ

ショウキョウ=ショウガの根茎 6-ギンゲロールの割合が高い
カンキョウ=ショウガの根茎を湯通しもしくは蒸したもの 6-ショウガオールの割合が高い
ショウキョウ→修治→カンキョウ gingerol→修治→shogaol

選択肢4:ニンジンとコウジン

選択肢4では、同じオタネニンジンの根を基原植物とするニンジンとコウジンについてです。
オタネニンジンはセリ科でしたか?
表で見ていきましょう。

ニンジンとコウジンの比較

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ニンジンコウジン
科名ウコギ科ウコギ科
基原植物オタネニンジンオタネニンジン
薬用部位根(軽く湯通ししたもの根(蒸したもの
主要成分トリテルペンサポニン:ギンセノシドトリテルペンサポニン:ギンセノシド
主治補気、補血、強壮など補気、補血、強壮など
配合処方補中益気湯、十全大補湯、大建中湯などなし

ニンジンとコウジンは修治の違いで名称が異なります。
どちらも薬用部位は根ですが、「ニンジンは軽く湯通ししたもの、コウジンは蒸したもの」になります。
配合処方ではニンジンの方が用いられます。

オタネニンジンはウコギ科です。他にトチバニンジンもウコギ科ですね。
~ニンジンはウコギ科、と覚えましょう。

オタネニンジンはセリ科ではなくウコギ科のため、この選択肢は×となります。

まとめ

ニンジン、コウジンはウコギ科オタネニンジンの根。
ニンジン=根を軽く湯通ししたもの、コウジン=根を蒸したもの

選択肢5:ソウジュツとビャクジュツ

この選択肢ではソウジュツ、ビャクジュツの共通点、相違点が問われています。
表で確認してみましょう。

ソウジュツとビャクジュツの比較

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ソウジュツ(蒼朮)ビャクジュツ(白朮)
科名キク科キク科
基原植物ホソバオケラオケラ、オオバナオケラ
薬用部位根茎根茎
主要成分精油:セスキテルペン(βオイデスモール、ヒネソールなど)、ポリアセチレン(アトラクチロジンなど)精油:セスキテルペン(アトラクチロンなど)、ポリアセチレン
主治健胃、整腸、利尿、鎮痛、発汗など健胃、整腸、利尿、止汗など
配合処方桂枝加朮附湯、当帰芍薬散など五苓散、白朮天麻湯、人参湯など

ソウジュツとビャクジュツは、メーカーによってソウジュツが入っていたりビャクジュツが入っていたりと区別されていないことも多いようです。
薬効はソウジュツの方が利尿作用は優れており、補気作用についてはビャクジュツの方が優れているようです。

ソウジュツの基原植物であるホソバオケラの学名は「Atractylodes lancea」ですが、lanceaは槍という意味です。
葉が槍に似ていることからこのように名づけられました。
私はソウジュツとビャクジュツと間違わないよう、Atractylodes lancea(ホソバオケラ)→槍→倉→蒼朮と、漢字つながりで生薬と基原植物を紐づけていました。

問題に戻りますが、ソウジュツとビャクジュツはどちらもキク科で根茎を用い、利水作用があるため、この選択肢は〇となります。

まとめ

ソウジュツとビャクジュツはどちらもキク科の根茎が基原植物
ホソバオケラ Atractylodes lancea(槍)→倉→ソウジュツ(蒼朮)

まとめ

以上で解説終了です。お疲れ様でした!

第103回薬剤師国家試験 理論問題 問109について解説しました。

この問題では似た名称の生薬について共通点、相違点が問われていましたね。
似た生薬同士、表を作成して一目でわかるようにしておくと試験や復習の際に役立つと思います。

この表を活用して生薬を覚えていきましょう!

疑問点や、気になるところがあった場合はお気軽にご連絡くださいね!

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