第107回薬剤師国家試験の必須問題の問29は、ミルタザピンの作用機序について問う問題です。
今回はNaSSAについてです。
問 29 ミルタザピンがシナプス間隙のセロトニン及びノルアドレナリンを増加させる機序はどれか。1つ選べ。
1 アドレナリン α2 受容体遮断
2 セロトニン 5-HT2A 受容体刺激
3 セロトニン 5-HT3 受容体刺激
4 モノアミン酸化酵素阻害
5 セロトニン及びノルアドレナリンの再取り込み阻害
https://www.mhlw.go.jp/content/000915525.pdfより引用
ミルタザピンとは?
ミルタザピンは抗うつ薬の中で「NaSSA」に分類されます。
Noradrenergic(ノルアドレナリン作動性) and Specific Serotonergic(特異的セロトニン作動性) Antidepressant(抗うつ薬)の略でNaSSAですね。
ミルタザピンはα2受容体遮断と5-HT2、5-HT3受容体を遮断することでシナプス間隙のセロトニン、ノルアドレナリンを増やしていきます。
そしてその増えたセロトニンが5-HT1受容体を刺激して、抗うつ効果を発現します。
(1)NA神経シナプス前α2-自己受容体を遮断することによりNA遊離を促進
https://www.meiji-seika-pharma.co.jp/pressrelease/2009/detail/090907_01.htmlより引用
(2)NA細胞体に存在するα2-自己受容体を遮断することによりNA神経を活性化
(3)NA遊離の促進により5-HT神経細胞体α1-受容体を介して5-HT神経を活性化
(4)5-HT神経シナプス前α2-ヘテロ受容体を遮断することにより5-HT遊離を促進
(5)後シナプス5-HT2及び5-HT 3受容体の遮断作用
シナプス前α2受容体を遮断することによってノルアドレナリンを遊離促進、ノルアドレナリン神経を活性化、セロトニン遊離促進→5-HT2、5-HT3受容体を遮断することによって相対的に5-HT1受容体が活性化
上記の流れによって5-HT1受容体を活性化し、抗うつ、抗不安効果を示していきます。
よって、選択肢1の「アドレナリン α2 受容体遮断」が正答となります。
ミルタザピンの注意すべき副作用
ミルタザピン以外にも、SSRIやSNRI等のセロトニンを増加させる薬剤で問題となる副作用に「セロトニン症候群」があります。
不安、焦燥、興奮、錯乱、発汗、下痢、発熱、高血圧、固縮、頻脈、ミオクローヌス、自律神経不安定等があらわれることがある。セロトニン作用薬との併用時に発現する可能性が高くなるため、特に注意すること。異常が認められた場合には投与を中止し、体冷却、水分補給等の全身管理とともに適切な処置を行うこと。
リフレックス添付文書より引用
薬剤開始時や増量時などは特に上記の症状に注意し、早期発見・早期治療ができるようにしっかりと服薬指導をしていきましょう。
また、併用でセロトニン症候群の発現を増強させる可能性があるため、MAO-B阻害薬とは併用禁忌となっています。
ミルタザピンやデュロキセチンなどのセロトニンを増加させる薬剤はMAO-B阻害薬と併用禁忌!
※MAO-B阻害薬…セレギリン、ラサギリン、サフィナミド
調剤・監査時には注意して見ていきましょう。
+α ミルタザピンの構造
ミルタザピンには鏡像異性体が存在します。
S(+)体はα2受容体、5-HT2受容体を主に阻害し、R(-)体は5-HT3受容体を主に阻害します。
ミルタザピンの作用機序から、S(+)体とR(-)体どちらか単体だけでは抗うつ効果は十分発揮できないことが分かりますね。
さいごに
抗うつ薬は作用機序ごとに分類して覚えていきましょう。
精神科領域でなくとも目にする機会も多い薬剤たちだと思うため、実務実習前や国家試験前には十分理解していきましょうね。